『私もこんな風に教えてほしかった、小学生に割合を教える時のコツ』

小学校5年生で学ぶ「割合」、小学校6年生学ぶ「分数倍」「比」は、小学校算数の中でもつまづきやす単元で、ここから算数が嫌いになってしまう子どももいます。

私の専門は認知科学、学習科学ですので、子どもたちの頭の中を考えながら「割合」を教えるコツをひもといてみます。

 

学びの目標は「知識をつなげていくこと」「知識を体系化していくこと」なのですが、「割合」についてはどうでしょうか。

「割合」に関する単元は、3年生で学ぶ「倍」から始まり、「割合」「百分率」「比」「比例」と続いていきますが、これらはばらばらなものだと思っている子どもたちも多いのです。大人だってゆっくり考えてみたこともないかもしれません。子どもたちの、これまでに学んだ知識同士をつなげいであげて、さらにつまづいているステップを学び直せるよう導いてあげられれば「割合」の学習は成功することでしょう。そのためには、実は教える側の頭の中も体系化していかなくてはいけません。頭の中を整理しつつ、どのように指導を進めるのかまとめてみました。

 

<その1>小学校で学ぶ数には2種類あることを確認する

 数には「数量を表す数」と「数量と数量の関係を表す数」があります。

 例えばりんご1個、水1Lは数量を表す数で、比較的低学年で学びます。

 「2倍」や「3割」というのは、もとになる数量があって数量同士の関係を表して

 いて、おおよそ高学年で学びます。

 ⇒指導のポイント

  高学年になったら、数には2種類ある事を教えてあげましょう

  *ピアジェの発達段階説から、抽象的な概念は概ね12歳以降に理解できるよう

   になると考えられるのでその時以降が学ぶ旬と言えます。もちろん個人差は

   あるでしょう。

 

<その2>小学校算数の中での「割合」の位置を確認する

 「数量と数量の関係」を表す数を整理してみましょう。

 3年生で学ぶ「倍」は、基になる数と比較してどのくらいか、を表します。

 「倍」は「1倍」よりも大きい時に使われることが多く、イメージしやすいので

 日常生活の中でもよく見かけます。とはいえ「0.5倍」や「2分の1倍」という

 言い方もします。

 では「割合」はどうかというと、比較的「1倍」よりも小さい数量の時の関係を

 表すときに使います。「もとの量の0.5は?」という時は、さっきの「0.5倍」

 と変わらないのですが、それらが同じだと思っている子どもは少ないです。

 そして「比」になると、もとにする数量は決めず、同時に表すことが

 できるようになります。ですが、「4:6」という比は「1:1.5」というように

 片方を「1」に表し直せば、右の数量は左の数量の「1.5倍」または「割合が1.5」

 というように表すこともできるのです。

 ⇒指導のポイント

  いっきにつないでしまうと混乱すると思いますので、まずは「倍」と「割合」を

  つないであげるとよいでしょう。

 

<その3>「割合」の計算は「倍」の計算と同じということを確認する

 「9メートルは3メートルの何倍ですか?」という問題ならすぐ解けるのに

 「3メートルをもとにした9メートルの割合は?」と聞かれると分からなく

 なってしまう子どもは多いです。「倍」の計算と同じように「比べる量÷

 もとにする量」で「割合」が計算できることを確認します。

 ⇒指導のポイント

  「倍」と同じように「元の量のどのくらいか」ということが知りたいので

  「もとにする量」でわって「割合」を求めることを確認します。

 

<その4>「割合」と「百分率」の関係を確認する

 多くの学校では「割合」を学んだすぐ後に「百分率」を学びます。割合は比較的

 小数で表されますが、小数というのは直観的に分かりにくいですよね。おそらく、

 直観的にわかりやすくするために1つの表記方法として使われるようになったのが

 「百分率」を使ったパーセント表記なのではないでしょうか。これは、人が

 開発してきた記数法の歴史を考えても、わかりやすさという点で理に適っている

 気がします。もとにする数量を100と考えることで、直観的に分かりやすく

 なりますよね。

 ⇒指導のポイント

  割合が小数だとわかりにくいので、100をかけて分かりやすくしたという説明で

  良さそうです。全体を「1」として、それぞれの割合が小数で示された円グラフ

  なんて、考えただけでも分かりにくそうですから。

 

<その5>「割合」はかけて初めて数量を表すということを確認する

 ここまでくれば、きっとお分かりだと思いますが、「割合」自体は数量を

 表していません。もとにする量にかけて、初めて実態としての数量が分かる

 のです。

 ⇒指導のポイント

  割合はかけて使うという大原則を確認する。

 

<その5>大原則から式を変形して様々な数量を計算する

 「もとにする量×割合=比べる量(あなたが比べたい量という意味)」

 を基にして、式を変形することで「もとにする量」や「割合」も出すことが

 できます。

 ⇒1つの式をしっかり理解してもらって、そこから展開できるようにします。

 

<その6>割合が分数で表されていても同じだということを確認する

 6年生では「分数の倍」という形で「分数の割合」が登場します。

 分数のかけ算とわり算を学んだばかりで、分数の計算そのものに気を取られて、

 5年生で学んだ「割合」とは結びつけにくいようです。そんな時には

 もう一度5年生の「割合」に戻って、小数で計算していた「割合」と

 「分数の割合」「分数の倍」をつないであげましょう。

 ⇒指導のポイント

  必要であれば5年生の教科書や問題集と比べながら「分数の割合」

 「分数の倍」とのつながりを確認します。

 

おそらく、発達段階で考えても、抽象的な概念を理解することがそもそも

難しい年齢に学ぶ「割合」ですので、すぐに理解できないことは決して子どもたちの

せいだけではないことを念頭に、1つずつステップを踏んで穏やかに親子で学んでみて

ください。

 

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*写真の書籍は、数学者の銀林先生らが書かれたもので、割合について体系的に

 知ることができます。

 

もっと子どもたちの「頭の中」で起こっていることを学びたい方は

こちらのサイトの「算数指導者養成講座」などでご確認ください。

 

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